てんこもりの母の決断
子育ての日々の中で、母というものはどれほどの決断をしていくのだろう。
朝の味噌汁の具からお弁当に夕食のおかず。今日傘を持たせる? 子どもの「休みたい」を認める? 仕事復帰はいつ? 保育園? 幼稚園? PTA引き受ける?
両立の壁、子どもの不登校、夫との価値観のズレ…、わが子に「生きてる意味がない」と言われたとき…。どんな場面も、母は、秒速で決断を迫られる。
そんなことを思いながら、お母さん大学サイトを見ていると、「仕事、辞めました」という衝撃的なタイトルが目に飛び込んできた。
一部抜粋する。
小さな幸せを、一日のうちにどれだけ見つけることができるか。
これが、私にとっては最も重要なこと。過去や未来に心を奪われ、「今」に心を向けられないのはどれだけもったいないことか。
ふと目の前の愛すべき子どもたちの愛おしさに癒され、気がついた。
「今」は二度と戻ってこない。ならば、この瞬間を味わい尽くそう。
この瞬間も、幸せを感じることができる、息をして動いている体に、ありがとう。
「シングルマザーで、仕事を辞めてしまって大丈夫?」と尋ねると、「何とかなるでしょう」とあっけらかんと言ってのける。ちゃんと息をしている。
まだ人生の半分も生きていないのに、どれほど母の決断をしてきたのか。
人生のエピローグに差しかかろうという私も、これまで子育てや仕事の中で、たくさんの決断をしてきた。
仕事の決断は意外と簡単。無意識に大変なほうを選ぶ。だが、子育ての決断を疎かにすると、倍返しにあう。
仕事の決断より子育ての決断のほうが何百倍も大変。仕事は社会の責任だが、子育ては未来の責任。どっちが大事かは一目瞭然だ。
ワーホプレイスとらんたん(日本丸メモリアルパークタワー棟A)がようやく動き出す。
これまでにない、新しいカタチの〝孤育て〟をなくす場だ。仕事(work)と家庭(home)をつなぎ、「ナンカ オモシロイコトイミアルコト ウミダス」プロジェクトだ。
お母さんがここへ来たら、まずは大きく深呼吸、それから海の絵本を開いて、ペンを持つ。母なる自分を感じる。
仕事を辞めたひとりの母は、ワーホプレイスとらんたんで仕事を生み出したいと、企画書を書いて持ってきた。そこには、「子どもとヨコハマを楽しむツアー」とあった。
「お母さんを笑顔にするだけじゃダメよ」の私の一言に、一瞬戸惑いを見せたが、「もう一度考えてみます!」と笑顔を見せた。
新たな企画が誕生した瞬間だ。こうしていくつもの母の決断が、わが子の未来をつくっていく。
藤本裕子
お母さん業界新聞社 代表取締役
お母さん業界新聞編集長
お母さん大学学長
お母さん業界新聞 2022年10月号 百万母力
https://www.okaasan.net/chiefeditor/boriki/92843/